ミレニアル世代に愛されるブランドづくり 〜彼らが消費したくなるものとは?〜(後編)

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ミレニアル世代に愛されるブランドづくり 〜彼らが消費したくなるものとは?〜(後編)

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モバイルでイノベーションを起こす人や新しい潮流にスポットライトを当てるMOBILE PEOPLE 。昨年12月開催のアドテック関西で大好評だったセッションリポートの後編をお届けします!

■前編はこちら

ミレニアル世代の心を動かすには?

共感できる“なにか”から“誰か”へ

菅野
では次に、現時点でたくさん存在しているこの人たちの心を動かすにはどうしたらいいのか。彼ら彼女たちの心を動かすキーワードはこれだ!というキーワードをまとめてきていただいています。森さんからお願いします。
「共感」。うちのインフルエンサーがなぜあそこまで人気になったのか、一言で言うと共感を集めたからなんですね。そしてその共感を分析すると、トーク力、カリスマ性、更新頻度、トレンド把握力、共感を生み出す文脈づくり、動画編集構成力、の5つの要素がバローメーターになっていると思っています。
菅野
やっぱり更新頻度が高いことも重要ですか?
そうです、たくさん動画を毎日投稿する、続けられる、ということも大事です。 

さらにこちら2人の対照的なインフルエンサーを比べてみました。先ほどの歩乃華ちゃんと、あとで動画を紹介するMARIMOくんです。歩乃華はカリスマ性やトーク力で人気のユーザーなんですよ。逆にMARIMOくんはどちらかというと動画構成力や面白いものを作れるところが評価されています。2人は同じくインフルエンサーでフォロアーの数も10万人台、フォロアー数だけで言うとMARIMOくんのほうが少し多いんですけど、実際に人を集客するとなると、歩乃華のほうが圧倒的に強いんですよ。つまり、カリスマ性やトーク力で引っ張った人のほうが中のファンが濃いんです。 

菅野
つまり、人にファンが付いているっていうことですか?
そうです。つまりMARIMOくんは動画が面白いからリツイートする・評価する、なんですけど、歩乃華の場合は歩乃華ちゃんが好きだからどんな投稿でも好き。
菅野
なるほど、ファンの濃さみたいなものが数値とはまた違った部分であるということなんですね。
文原
それはnanaのコミュニティでもよく見受けられることですね。音楽も一緒で、“何”よりも最終的には“誰”になってくるんですよね。最初はまずコンテンツのキャッチーさとかでコンテンツがうけてシェアされます、認知をされます、ただそこからはやっぱり「この人が作ったから」というところに徐々に変わっていくと思っています。長く継続的にファンになってもらうには誰がやっているかということがすごく重要になってくるのかなと。
菅野
そのお話はまさしくマーケティングでも同様だと聞いていて思いました。ブランドがヒットコンテンツを狙って、バイラルムービーやヒーロー動画を作ることは入り口としてあると思いますが、それは“何が”の話なんですよね。最終的にはそのブランドのことを継続的に好きになってもらうためには、1つのコンテンツだけじゃなくて“誰が”というところに落とさないといけないということがあると思います。ブランドづくりという観点でも、そもそもブランド・企業は法人格というくらいですから人格みたいなところをきちんと作っていく、消費者との接点で一貫したコミュニケーションをとることがとても大事なのかなと。
続いて文原さんにご用意いただいたキーワードは。

“主役のわたしたち”に委ねる

文原
「当事者感」です。僕らのサービスの場合、実は上手い下手はあまり関係がなくてですね、僕たちが聞いて「うーん微妙かな」と思っても、その子たちはその子たちなりにクラスターができてすごく楽しんでいるんですよね。だからそのコミュニティの中でいかに自分が主役なのか、自分にスポットライトが当たっていて自分が大事にされていると思えるかというところが重要なのかな。それが主役感や参加感、一体感なんかを含めた当事者感ということです。それから、インスタントな承認欲求。
菅野
これ引っかかりのあるキーワードですね、インスタントな承認欲求。
文原
スマホで90秒で音声が録音できてシェアできるんですね。音質はぶっちゃけ大して良くないですけど、めちゃくちゃ気軽なんですよね。結局ユーザーが続く理由って、投稿するとすぐにいいねって返ってくる。拍手がくる。すぐに「歌声かわいいですね」とか。その上でいきすぎて“拍手返し”というものも生まれています。「自分に拍手してくれたら私も絶対拍手返しますよ」という、ツイッターでも相互フォロー100%とかありますけど、要は、拍手をもらうことに中毒的になっていくんですよね。それが作り物であっても麻痺してきている。とにかく拍手返しますから拍手くださいということで、インスタントに自分の承認欲求を満たしたいと。
それからnana民という言葉があって、この言葉はこちらが作ったのではなくユーザーさんが勝手に自分たちを「僕たちはnana民だ」と呼び始めたんです。つまりコミュニティだということなんだと思うんですよね、ここは僕たちの居場所だと。でもめんどくさいのは嫌なのでゆるいかんじがいいと。この微妙なニュアンスです。ゆるいつながりという意味で例えばユニットを作ったりもするんです。「5人ユニットでわたしセンター」「わたし右端」みたいのを全部バーチャル上で、ある意味お遊びなんですけど真剣に楽しんでお遊びをしているかんじなんですね。
菅野
おもしろいですね。VAZさんとnanaさんにはどちらかというとユーザーの視点から考えてもらいました。五井さんにはブランドあるいは企業はどうすればいいんだっけということでご用意していただいたのがこちら。 
五井
2つ挙げさせてもらいます。まずは「ユーザーとブランドとの接点をみつける」。それぞれブランドの商材の特性やメリット、何をミレニアル世代に対して提供できるかということとユーザーが何を欲してるかということの共通点・接点を見つけて、それを伝えていく。当たり前のような話ですがやっぱりそこの情報整理がとても重要だと思っています。
菅野
接点がないと企画として面白くてもブランド価値に還らないかもしれないですし、そもそも面白くならないかもしれない。
五井
やる必要がないかもしれないですしね。ミレニアル世代にターゲッティングしてそこでどういう伝えかたをするか、何を言ったらいいのかということが非常に大事かなということです。
菅野
その手前の部分で自分たちがそもそも何者かということを、ブランドが整理していく必要がありますよね。そして2つめが…
五井
「委ねる」。これは、どういう表現をしたら成功の確率が上がるかということを僕たちよりも知っている人たちがいて、それはもうメディア側だったりインフルエンサー側の人たちですと。僕たちはどうしても社内の承認をとったりする過程で、ブランドをいっぱい出さないといけない、商品をいっぱい出さないといけない、といった制限があると思うんですけど、できる限り我慢して表現の部分は委ねるという姿勢が大事だと思います。 
菅野
勇気がいりますよね。
五井
勇気いると思うんですが、そちらのほうがどう考えてもいい。
菅野
挙げていただいたキーワードを並べて見てみると 、森さんが「共感」、文原さんが「当事者感」、五井さんが「委ねる」って、関係が横と言いますか縦の関係ではない、上からではないところが3人共通していると思ったのですが。
文原
そうですね、まさしく個人的な感覚ではこれら全部含めて当事者感と言いますか、やっぱり上と下という関係性じゃないんですよね。逆に言えば昔は情報の選択肢が少なくて情報は上から下に流れるものだったと思うんですけど、今はあらゆる形で分散しているのでそういう形のものは通用しづらくなってきていますよね
菅野
ちゃぶ台ひっくり返すようなことを言いますけど、これって若い人たちだけなんでしょうか。
そんなことないですね。年上の方に人気が高いインフルエンサーもいます。
文原
そうですね、まあたしかに若い子たちが多感だし時間もあって、マーケティング的な観点だと一番リーチをしていきたい、これからさらに社会に出てお金を手にする世代ですし、いま愛着を持ってもらったら10年20年は続いていくという意味でいまミレニアルが重要だ、というのは理解できるんですけど、でもたしかにあまり年齢そのものが本質じゃないとは思っています。適切な距離感で対等なかたちでやりとりをすることが気持ちいい、そこに思いやりがあればなお良い、これは年代を問わない本質的なものなんじゃないかなあと思っています。
菅野
自由自在にコンテンツを作れて、投稿やシェアにも積極的なミレニアル世代はわれわれ世代とは違っていると感じる部分はたしかにあるんですけど、本質的な欲求というのは時代ではあまり変わらないのかなとわたしも思います。
では最後のテーマです。ブランドとして、彼ら彼女たちに愛されるためにはどうすればいいんだろう?ということです。五井さんから実際の事例を紹介していただきます。「お正月を写そう」ですね。

ミレニアルに愛されるブランドづくり

五井
はい、富士フイルムのブランドメッセージ「お正月を写そう」の新しいキャンペーン事例です。富士フイルムはフィルムカメラの時代に「お正月を写そう」テレビCMを流し始めたわけですが、当時は写してもらえさえすれば自動的にプリントしてもらえたので、コマーシャルメッセージとしては“写そう”でよかったわけです。そこからデジタルカメラや携帯カメラが出てきて写してもプリントしなくなった、しかし、化粧品などの商品の告知のために「お正月を写そう」というテレビCMはずっと継続してやっていました。そして昨今テレビを見なくなったと、テレビCMは流していてもリーチの数が減っていく中で「お正月を写そう」というメッセージをどうやって伝えていくのかが課題になりつつありました。
そこで、ツイッターで「お正月を写そう2016」を実施しました。「『#お正月を写そう』をつけてあなたのお正月画像をツイートしよう」というキャンペーンをやったんですね。お正月というひとつの大きなモーメントがあって、一方でツイッターのユーザーはネタを求めている、画像をいっぱい撮る、お正月を撮るでしょうと。まさにこの「お正月を写そう」というブランドメッセージは行動を起こさせるメッセージだったということもあって、ハッシュタグ化することによって自然な形で投稿につながるんじゃないかと考えて企画しました。

菅野
シンプルなようでいて、このブランドにしかできないことをやっているように感じますね。これまで培ってきた「お正月を写そう」というサウンドロゴも含めたブランドのアセットが頭の中にあって、ユーザーからしたらそのモーメントがお正月だったらぴったりですし、ブランドとしても委ねている、そんなかんじですよね。
五井
結果として、「#お正月を写そう」付きのツイートが約1万件、日本各地からいろんなお正月の画像があがって、やっていてすごく楽しいキャンペーンでした。そしてKPIのひとつはやはりCM動画を見せるということだったんですね。仕組みとして「#お正月を写そう」が広まれば広まるほど動画に行きつく人が増える立て付けにしたので、動画の再生も伸びて、その中で紹介している商材のリーチもちゃんと広がったと。
菅野
すばらしい事例ですね。続いてVAZさんはインフルエンサーを起用したキャンペーンです。



菅野
もっと長く見たいんですが(笑)。これクライアントさんいるんですよね?
読売テレビさんですね。アニメの逆転裁判のプロモーションでやってくれと言われまして、普通だったらそこでアニメの流れを説明したいと言われるんですけど…
五井
委ねてますよね。
まさに委ねてもらってですね、「異議あり!」という言葉を使えばなんでもいいと。
菅野
これ企業側ではディレクションはしていないんですか?
してないです。全部本人の感性で。この子が先ほどの話に登場したMARIMOくんです。
菅野
ああさっきの、動画構成力のMARIMOくん、たしかにコンテンツが面白い(笑)
五井
最終チェックはあるんですか?
チェックはするんですけど、直しなしで。
菅野
直しなしで? 五井さんこれ許可とれますか?
五井
新しいことにチャレンジする広告主側の覚悟や社風みたいなものが大きく影響しますよね。
ちなみにリサーチをかけたところ、この動画がツイッターで流れて、「逆転裁判」視聴者の8割がこの動画を見たうえで番組を見たと。さらに今まで「逆転裁判」を見たことがなかった人のうち約14 %が「逆転裁判」を見たんですね。見逃し配信も含めてですけど、視聴率も3〜4%伸びました。
五井
広告主の勇気の勝利というかんじですね。
菅野
名言も出て、時間も迫ってまいりました。まとめてもらってもいいですか?(笑)
五井
そうですね、インフルエンサーもアプリもそうなんですけど、そこにはそこのルールがあって、やっぱりそのルールや空気の中でうまく組んでいく必要があるかなと。どうしても企業側はこうしてくれああしてくれということを、それはいろんな目的があってのことなので言いがちですけど、そこは彼らのルールに任せてやってもらうということが必要なのかな。
菅野
彼・彼女たちの感性をどれだけ尊重できるかということなのかもしれませんね。ということでセッションを終わります。ありがとうございました。

written by Meiko Sekiji