賢いオトナは知らない?芸能界を変える、これからの人気者の生まれ方

賢いオトナは知らない?芸能界を変える、これからの人気者の生まれ方

モバイルでイノベーションを起こす「人」と「仕事の舞台裏」にスポットライトを当てるMOBILE PEOPLE。今回はネットから生まれる人気者、“インフルエンサー”のマネジメントを行うVAZ社長の森泰輝さんです。ソーシャルの最前線で新しい有名人を発掘・育成する森さんに、インフルエンサーの素質・育て方・活かし方などを聞いてみました。「インフルエンサーは動画を作り込んではいけない」「インフルエンサーの肩書きを捨てたい」など、気になる話が盛り沢山!インフルエンサーってなんだかよくわからない…と思っている人にこそオススメです。

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いまのバズは草の根で生まれる

菅野
最近話題になった事として、VAZさんが狙って作ったバズムービーがありますよね。まずはあのムービーのことからお聞きしたいんですが、パロディなんですよね?
はい、日清さんのチキンラーメン58周年のウェブ限定ムービーのパロディです。日清さんのムービーでは、これまで流行ったものがどんどん出てきて「流行は時代によって変わるけどチキンラーメンの味は変わらないね」というブランディングだったんですけど、その中で紹介されているバズはテレビを中心に戦略的に作られたものばかりで、SNSから草の根でバズったものは1つも紹介されていないことに気がついて。テレビから生まれるバズもたくさんあるんですけど、今はSNSや草の根で、ごく普通の一般人が投稿したものがバズることが多いので、そういうのもいろいろありますよというのを見てもらいたくて作りました。

菅野
「バズを知らない恥を知れ」ってちょっと挑発的なメッセージで締めてますが、これが3日で700万再生いったということで、ちゃんとバズった(笑)。これに出てくる26個のバズ、みなさん何個知ってますかと。僕は正直、知らないもののほうが多かったんですよ。森さん、いくつかピックアップして紹介してもらえますか?
では、まず「ぶりっこの頂点」。真ん中にいるのがテオくんといううちに所属しているインフルエンサーです。彼がVineに投稿した「ぶりっこの頂点」動画がバズりまして。元の動画、これだけなんですけど。
本当に友達に送るレベルで撮ったらしいんですけど、投稿したら爆発的にヒットして3000万再生、いろんなところで取り上げられて、一躍若者の中で有名人になったんですね。そのあとも一発屋で終わらないように投稿を続けて、もともとは大工さんだったんですけどうちと契約して職業・インフルエンサーになった。

それから例えば「プレゼントアルバム」。自分の彼氏、彼女の思い出を立体的にアルバムにデコってそれを動画にして投稿するというのが流行りました。MixChannelでカップル同士の動画を投稿することが起源になっていると思うんですけど、そういう個人的なものを人に晒すことに抵抗がない層が現れたということですね。

菅野
2人だけの思い出のものをパブリックなものにすることに敷居を感じない人たちが出現したと。
そうです。それに対してよく、「なんで敷居を感じないんだ?」って考える大人がいるんですが、結論は簡単です。やってるほうは特に考えてないです。世の中のリスクをいろいろ考えて生きているわけじゃなくて、みんななんとなく自分の楽しいことをやっているだけなんで。頭のいいマーケターほどその発想が抜けてたりするんですけど(笑)。
菅野
自分も学生時代を思い出すと難しいことなんて考えていなくて、楽しいからノリでバカなことしていました(笑)。
それから双子ダンス。
2人揃っているとかわいいっていうことなんですけど、誰がやってもある程度のクオリティがいくフォーマットというのが若者に人気が出やすいなと思います。
菅野
フォーマットがはっきりしているから真似しやすいんですね。
そうですね。真似しやすい、自分もやってみやすいってことです。

「デジタルネイティブ」と「スマホネイティブ」は全然違う

菅野
こうした若年層のバズを、おそらくマーケティングに携わっている大人たちは軒並み知らないと思うんですよ。まず知りたいのは、なんでこんなに知らないことが起きてるのか?ということなんですけど、なんでなんでしょうか?
きちんと捉えないといけないのは、よく言われている「デジタルネイティブ世代」と「スマホネイティブ世代」を分けて考えなくてはいけないということですよね。デジタルネイティブ世代っていうのは1980年以降に生まれた、最初からインターネットがある、でも半分テレビの人たちなんです。それが1993年以降の生まれになると、中学1年生のときからすでにiPhone3Gがあった「スマホネイティブ世代」、ガラケーを持ったことがない完全にスマホの人たちになるんです。「デジタルネイティブ世代」のSNSは主にFacebookなのに対して、「スマホネイティブ世代」はツイッターなんですよ。ツイッターでコミュニケーションをとり、テレビの代わりにスマホでYouTubeを見る。つまり、見ている世界、住んでいる場所が違う。ツイッターでどんなに流行っても、それがFacebookに流れないと大人までは回ってこないですよね。
菅野
ネットのバズって順番としてはツイッターのあとにFacebookにくる感じなんですか?
大体そうですね。アイスバケツチャレンジやPPAPを大人までみんな知っているのは、最初はツイッター上でバズっていたのがFacebookに取り上げられてそちらでも流行ったからです。

インフルエンサーのつくり方 〜「99.9%の人はやめておいたほうがいい」

菅野
VAZさんってインフルエンサーのマネジメントをしていて、ホリプロとソニーミュージックからも出資を受けていますよね。伝統的なマスメディアの芸能事務所ともタッグを組んでいるのが面白いと思うんですが、ネットでの人気者の生まれ方は、テレビの芸能人の生まれ方とどう違うと思いますか?
すごく簡単に言えば、テレビのやり方というのはプロデューサーや大手プロダクションの人が「この子ならいける」と思った人をテレビに出すための営業をして、テレビに出て初めて露出の機会が与えられて、その人を見た100万人のうちの何万人がいいと思うかで人気が決まると思うんですね。その点、インフルエンサーってとにかく草の根なんですよ。フォロワー100だった子が自撮りをして、フォロワーのうちの1人、1%でも反応する人間がいたらその人がリツイートをする。リツイートされた先の100人のうち何%が反応する。という連鎖で、ある日急にフォロワー1万の子たちが生まれる。テオくんみたいに何か1つの動画やコンテンツでバズりました、というほうがわかりやすいんですけど、実際はビジュアルや見た目の雰囲気・カリスマ性だけで、例えばさっきの双子ダンスのりかりこちゃんみたいに「双子でかわいい、なにこれ憧れる」ということで一定数の人が反応して人気が出るということが多いですね。
菅野
ということは、人気になる要素を持っている子は放っておいても、本人が思っていなくても、人気になることがあるんですか?ビジュアルやカリスマ性って狙って演出できるものではないところもありますよね。
本人が思っていなくても伸びていくことはあるんですけど、才能はあるのに生かしきれていないという子も多いんですよ。うちも才能をつくることはできないです。でも才能を長期的に生かすにはどうしたらいいかということは考えられる。
菅野
そこがバズさんの付加価値になるわけですね。
そうです。ただ基本的には本人の才能が一番大きいので、僕らはその雰囲気とカリスマ性を見抜くことが一番大事ですね。
菅野
それってどう見抜くんですか?感覚の部分だとは思うんですけど、VAZさんのやり方みたいなものがあるんでしょうか?
とにかく動画を見まくる、ですね。動画1日100本は見てるんで。ずーっと動画をみて、何が伸びるのかっていうのを見続けています。
菅野
実直にやるんですね。見抜いたあとのインフルエンサーの育成の仕組みを少し教えてもらえませんか?
よく聞かれるんですけど、その都度オーダーメイドなんですよ。もちろんSEOも意識するし、流行りも意識するし、その人の活かし方も意識するし、複雑です。たまにクオリティが高いものをあげたり、クオリティが高いものあげすぎないでジャブであげたり。その人にとってのジャブ動画のフォーマットって何だろうと考えたり。
菅野
ジャブ動画ってなんですか?
その人が簡単にあげられる動画のフォーマットを開発するんですね。YouTuberでも伸び続けて6〜7年やり続けてる方って何が圧倒的に違うかって、コンテンツで人を楽しませているもののコンテンツに頼っていない。“プロ並のクオリティでかっこいいものを作り込んでやり続ければ伸びる”という発想は絶対にダメなんです。そうではなくて、ただ座って、何もしないで喋っている動画で100万PVとれる人が一番強い。それを目指さないといけない。すごく簡単なフォーマットで毎回その人のトーク力や人間力で楽しんでもらう、そうしてファンを濃くしていくっていう風にしていかないときついんです。継続的に長期的にできるジャブで伸びない人はもうダメ。作り込んでると動画によって再生数に幅がありすぎて怖くなっちゃうんですよ。
菅野
なるほど、簡単にできないと本人も疲れてしまいそうですしね。
そうです。まあ試行錯誤はそれぞれあって、最初に話したテオくんも、爆発的にバズったあとにどう伸びたらいいかがわからないという苦しい時期があったんですよね。そのとき彼が編み出したのが時流に乗るというやり方。毎回自分でネタで生み出すのは難しいので、トレンドにいち早く乗る。例えばPPAPが流行る前にいち早く踊るとか、そういう方法です。それでフォロワーは伸びてうちとも知り合ったんですけど、その伸びたフォロワーって、「こいつ毎回おもしろい動画出すぞ」とコンテンツに付いているだけで、彼の真のファンではないということがわかってきた。なのでそこから脱却するために、今度は毎日ツイキャスをやってもらったりYouTubeアカウントを開設したりしてキャラ自体を楽しんでもらうことを続けて、ファンを濃くしていった。結果、いまテオくんはスカイピースというユニットで圧倒的な人気があります。
菅野
なるほどね。今からインフルエンサーになろうと考えている人がいるとして、やめておいたほうがいいタイプってありますか?

はっきり言って、99.9%はやめておいたほうがいいです。「伸びたいんです」と言われることもよくあるんですけど、まあ無理だよね、と。ちなみに僕も菅野さんも100パー無理なタイプです(笑)。

菅野
ですよね、それは僕もそう思います(笑)。

インフルエンサーは自分でコントロールできる

菅野
僕の個人的な見解で言うと、芸能界2.0みたいなものがこれからあるのかなと思うんですね。従来のマスメディアと大手タレント事務所と広告会社の鉄のトライアングルみたいなものが、ソーシャルプラットフォームになり、VAZさんのようなマネジメント会社が出てきて、オーディエンスユーザーが直接つながっている。三角形のかたちがどんどん変わってきているなぁと。森さんはどう思いますか?
マネジメントする側とタレントとの力関係がフラットになっていく感じはしていますね。それと、マスメディアを活用して伸びるやり方よりもネットを使ったほうが安定的というところもある。なんでかって、インフルエンサーは接触回数を自分でコントロールできるんですよ。結局見ている人は接触回数が多いとどんどん好きになっていくので。
菅野
単純接触効果ですよね。
そうです。それはすごく大きくて、マスメディアだと、もし自分がプロデューサーから嫌われて「この子旬じゃないな」と思われたらもう出演できない。一般ユーザーと接触する回数が減ってしまうじゃないですか。減った瞬間にオワコン感が出てしまう。
菅野
マスメディアで世間への露出をコントロールするのはタレント本人ではなく、テレビ局側や事務所側だということですね。それがいまVAZさんの見ている世界では、インフルエンサー自身がコントロールできる。
そうです。だからトップかゼロかじゃなくて、中間的な趣味レベルでやる人もいるし、いろんなレベルを自分で選んで露出できる。そこは従来の芸能人との大きな違いだと思います。

「使えば担保」にはならない、インフルエンサー・マーケティングの落とし穴

菅野
次にマーケティング視点のお話を聞きたいんですが、いまインフルエンサー・マーケティングってある意味バズワードになっていますよね。一方で、インフルエンサー・マーケティングは怪しいと思っている人もいると思うんですよ。それってなんでだと思いますか?
一つ目としてはその人がインフルエンサーを知らないから判断がしづらい。二つ目はインフルエンサーの使われ方が適切でない。例えば企業が「バズ動画を作ります」って企画することあるじゃないですか。「これ面白いからバズりますよね」って、あれはけっこう難しくて、一番危ないんですよ。一か八かの賭けみたいな。それに対してよくマーケティング会社はペイパブを買ってある程度担保しようとする、それと同じようにインフルエンサー起用を考えている人が多い。「インフルエンサーっていうのも起用しとけばある程度の再生回数いくでしょ」という感じですね。かつ、インフルエンサーだとペイパブよりも見ている層がオーガニックなので親しみもあるし、インフルエンサーに対する好意がそのまま企業に転化されるという利点もあると考えられる。それはうまくいけばその通りなんですけど、彼らへの好意がそのまま企業に転化するためには、彼女たちのストーリーにちゃんと乗っけないといけない難しさがあるんですよ。どうやって彼女たちのストーリーにはめていくかを考えて使わないと効果は出ないし、場合によっては逆に企業に悪いイメージが付くこともある。
菅野
もともと彼ら彼女らがやっていることに企業側もなるべく沿っていかないといけないということですよね。とりあえず使っておけば、とペイパブと同じように数の担保のために使うだけでは結局うまくいかない。

インフルエンサー の活かし方

菅野
VAZさんが携わったマーケティング事例でうまくいった例を教えてください。
最近で言えば森永製菓さんの「友チョコ方程式」のキャンペーンが一番わかりやすいと思います。バレンタインの売上を増やしたいということがゴールで、森永のダースとホットケーキミックスとココアの3つの材料だけで簡単にチョコのお菓子が作れることを若年層に広めようという狙いでした。
ダース何個で友達何人分作れる、という意味での「友チョコ方程式」なんですけど、まずはその言葉を広めるために「友チョコ方程式」の歌とダンスを若年層が反応しそうな曲調と振りで作って、うちの所属インフルエンサーであるねおちゃんやりかりこちゃんに踊ってもらったと。振り付けは新垣結衣さんのポッキーダンスを作っている有名な先生にお願いしました。それでうちの若年層向けのSNSで「友チョコ方程式コンテスト」を開催して、「『友チョコ方程式』を踊って投稿して“ねお賞”に選ばれた人はねおちゃんの直筆サイン入りチェキをもらえますよ」というインセンティブを付けた。その上で、踊るだけではなくて実際にチョコを作ってもらうために、今度はねおちゃんとりかりこちゃんが実際にダースでチョコを作る動画を流して、コンテストも「踊ってみた部門」とあわせて「作ってみた部門」を置き、みんなにも作ってもらうという流れにしました。

結果、ツイッターでの動画再生数は468,284回、YouTubeでの動画再生数は1,729,569回にまで上りました。立体的に企画することで狙いを全てカバーできて結果につながったという良い例だと思いますね。
菅野
今回は10代への拡散という部分でFIVE のプラットフォーム でも「友チョコ方程式」の動画を配信して投稿を呼びかけるっていうことをさせてもらいましたね。
はい。ユーザーに頼るとどうしても一気にマスにリーチする、面をつくるという保証がしにくいので、一気に何百万人にリーチしたいときは配信面を増やして、アドとインフルエンサーを組み合わせるのが非常に効果的だと思います

これからは“インフルエンサー”という肩書きをなくすことを目指す

菅野
インフルエンサーをネットワークするという企業って、今わりと多く出てきていますけど、VAZさんはその中でどう差異をつけて、どうなっていきたいと思っていますか?
とりあえずインフルエンサーを束ねて専属契約もせずに「好きな時にお仕事してね」という会社も多いんですけど、うちは専属で契約をして、それぞれの個性に合わせてマネジメントをして、最後にスターにするところまで一本化してやる覚悟ですね。もちろんうちにもねおちゃんのように「藤田ニコルちゃんのようになりたい!」と野心を持っている子もいれば、「趣味レベルでやってます」という子もいます。でも本人の望みによってはショートムーバー・YouTuberの枠を超えてスターにする、インフルエンサーという肩書きをなくす、そういう事例を作ることが大事だと思っています。インフルエンサーってただ拡散機だと思われがちですが、そうではなくて、そもそも実際はリアルにファンがいるタレントだと思うので。
菅野
なるほど。むしろインフルエンサーという言葉でなくてもいいというか、新しい形のタレント事務所のモデルを作るということに近いですね。
そうですね。やっていけばいくほど従来のタレント事務所ってすごいなと思うんですよ。王道ルートでタレントにしていくブランディングって大事だなと。テレビに出ることによってより多くの人に「いまこの子流行ってるね」と認知してもらう、それでインフルエンサーからタレントになれるかどうかがこれからのチャレンジです。音楽でも、スカイピース(テオくんのユニット)はソニーさんと組んでミュージシャンにしようと思っていますし、そうやってガチなアーティストやガチなタレントを生んでいって、そういう方向性もあるんだという希望を与えたいと思います。そういう広がりのもとに、趣味でも王道でも、いろんな「有名になりたい」子たちがそれぞれの気持ちを満たせるプラットフォームを作っていきたいですね。